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第13回フューチャーセッション「移動×IT〜私たちの”移動”はどう変化するのか〜」

2019.04.05

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第13回フューチャーセッション「移動×IT〜私たちの”移動”はどう変化するのか〜」

2019年3月25日(月)、那覇市にある沖縄県立図書館にて第13回フューチャーセッション「移動×IT〜私たちの”移動”はどう変化するのか〜」を開催しました。

今日、私たちが生活する中で必ず取る行動である「移動」の概念が大きな転換期を迎えています。

沖縄ではマイカー保有率が依然高く、観光客の増加なども相まって交通渋滞が悪化しています。一方で、人口は減少期に入り高齢化も進んできており、より安全・簡単・安価・効率的な移動手段が求められています。さらに技術の進歩によりリモートワークも可能になってきています。自転車・バイク・車などを使ったレジャーの分野でも、GPSや動画などの活用により新たな楽しみ方が生まれてきています。「移動しないようにすること」を含めて我々の「移動」にまつわる環境は大きく変化しようとしています。

この変化の時代に、私たちにとって「移動とは何か」について考え、望ましい移動の未来に向けて私たちは今から何を話し合う必要があるのか?について対話を行い考えました。


[1] キーノートスピーチ(論点提供) 

1.「移動×IT」について、久高 友嗣さんに移動が起こる場面や人と移動の関係性についての考察を発表していただきました。人の移動はいろいろな目的や活動に伴うものであり、移動は下に挙げるいくつのテーマで議論されている問題であることを話していただきました。

(久高さんがあげた移動にまつわるテーマ)
・福祉×移動:買い物弱者、バリアフリー
・仕事×移動:リモートワーク
・交通×移動:渋滞、公共交通低利用、@沖縄
・観光×移動:オーバーツーリズム
・自動車×移動:ハードからソフトへMaaS
・多拠点×移動:住所不定(納税)問題
・移住×移動:地域の受け入れ
・バンライフ×移動:トイレ
・街づくり×移動:自動運転が計画に織り込まれていない@日本

人にとっての移動にはプラスの面とマイナスの面があること、また、参加者の中には移動を楽しめる人と、できるだけ移動したくない人がいることに気づかされました。

2.次に、沖縄県サイクルツーリズム推進協会の謝花 さゆりさんに「自転車にのる私の目線から」移動×ITについて発表をしていただきました。

・サイクルツーリズムを取り巻く環境の変化(観光客の増加・電動自転車・シェアサイクリングなど)がどのように変わってきたか、または、変わっていくか、
・2030年までの沖縄入域客数の見通し→外国人観光客が約2倍になると見込まれていること
・観光産業は約4倍増の4.4兆円規模になり、自動車産業を超える可能性があること
・観光客向けの電動シェアバイク(ちゅらチャリなど)が表れてきており、自転車も観光産業の一部となっていること。
・ITが自転車レジャーに活用されている例、そしてどのように活用できそうかについてのアイデア
等の情報を提供していただきました。


[2] グループダイアログ 

「移動の望ましい未来」について考えるために、まずは、これまでの10年、20年で変わったことについて参加者で話し合いました。その結果、
・沖縄にゆいレールができ、公共交通としての大きな役割を担うようになった
・LCCやクルーズ船が増え、移動が速くなったり、手段が多様になった。
・観光客が増え、定住人口ではなく移動人口が増えた。
・ノンステップの車やEV車など優しい自動車が増えた。
などの意見が出されました。
移動が安く便利になり、その結果として観光客は増え、障害者の方にとっても移動しやすい環境に変化しつつあることがわかりました。

次に、これからの10年で目指したい「移動の未来」について考えました。その結果、
・交通はもともと権利であり、色々な人が容易に移動できるように、もっと多様なインフラを整備しなければならない。もっと弱者優先の社会のために行政の意識改革も必要。
・自動運転などが今の5倍増えている。
・自力移動の面白さやエコさについての理解をもっと広める。
・移動を軸としたゾーニングを考える。
・移動を減らす、または、歩くだけで済ませられるようなコンパクトな社会・街づくりをする。街づくりのしょぼさが移動を強いている。
・高速移動など、もっと移動手段を進化させる。
・車におけるライフスタイルを多様化させる。住むための車の開発など。
・自転車ライフを充実させる仕組みやアプリを作る。
・バスの不便さなどを解消する(公共交通を進化させる)
・異なる交通システムのシームレスな連結・情報提供が必要。
などの意見が出されました。


今回のセッションでは、人と移動について深く考えることで、なぜ我々が移動するのか、どのような移動が存在するかなどについて理解を深めました。そして、参加者同士で対話を行うことで、それぞれの参加者にとっての移動の意味や課題などについて共有し、移動についての理解をさらに深めました。

対話の中では、
1.誰でもが移動しやすい多様な移動のためのインフラの必要性
2.移動そのものの楽しさの追求
3.移動を行わない・または、歩くことだけで事足りるようなコンパクトな街づくり
などが主な論点となっていました。

移動とは、いろいろな目的や手段で行われるものであり、移動に関連するテーマは非常に多様なものです。今後は今回の対話の成果などに基づいた論点を設定し対話を深めていきたいと思います。